小川 糸『あつあつを召し上がれ』
小川 糸著『あつあつを召し上がれ』新潮社 2011年10月刊 172頁 1,300円
本書は、「旅」等に掲載された7編の短編を単行本化したものです。
初出は、以下の通りです。
「バーバのかき氷」 『旅』2010年11月号
「親父のぶたばら飯」 『旅』2011年1月号
「さよなら松茸(改題)」 『旅』2011年3月号
「こーちゃんのおみそ汁」 『旅』2011年5月号
「いとしのハートコロリット」 『旅』2011年7月号
「ポルクの晩餐」『旅』2011年9月号
「季節はずれのきりたんぽ」書き下ろし
表題でおわかりのように、食べ物がテーマとなっています。
ほとんどの作品が、食事を通しての主人公と恋人、
あるいは親子などの二人の物語です。
簡単に紹介します。
認知症になったバーバ(祖母)に、かき氷食べさせようとする孫娘を描いた「バーバのかき氷」。
恋人に案内された横浜中華街の一番汚い店。恋人が幼い時から通っていたなじみの店で、絶品の豚バラ飯をご馳走になります。恋人に、 “一緒に美味しい食事ができる相手が一番いい。”とプロポーズされます。「親父の豚バラ飯」
恋人と、別れ話の前に予約した奥能登にあるひなびた旅館。さいごの食事を描いた「さよなら松茸」。
嫁ぐ前の娘呼春が、亡き母親直伝のみそ汁を、一人残される父親のために作る「こーちゃんのおみそ汁」。
認知症になった主人公が、主人とよく行ったパーラー(実はファミレス)で、ハートコロリット(コロッケ)を注文する「いとしのハートコロリット」。
雄の豚の愛人ポルク(フランス語で豚)と心中をしようとパリに赴き、最後の晩餐にのぞむ「ポルクの晩餐」。
亡くなった父親の出身地秋田の名物きりたんぽ。娘と母親が父親の四十九日に、二人で思い出に浸りながら、季節外れのきりたんぽ鍋をしみじみと作ります。「季節外れのきりたんぽ」
著者は、以前『食堂かたつむり』でも紹介しましたが、
“大事な人と同じ物を一緒に食事すること、それが幸せである。”という哲学を持っているようです。
どの作品も、食べ物に関しての記述は克明で、また、ある意味で共に食べている二人に対して温かいまなざしが見られます。
孤食ではなく二人で食べること、あるいは家族で食べることの大切さの、作者のメッセージを感じます。
"小川 糸『あつあつを召し上がれ』" へのコメントを書く