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zoom RSS 川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』

<<   作成日時 : 2012/05/07 18:24   >>

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川上未映子著『すべて真夜中の恋人たち』 講談社2011年10月刊 304頁 1600円

本書は、「群像」2011年9月号を単行本化したものです。

「真夜中は、なぜこんなにも綺麗なんだろうと思う。それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、私はこの真夜中を歩きながら思い出している。」(冒頭)
 主人公の入江冬子は、34歳のフリーの校閲者。小さな出版社に務めていましたが、職場でのいじめなどもあり、成り行きもあってフリーになりました。彼女は、25歳の誕生日の夜、午後11時過ぎたあたりで、ふと真夜中を歩いてみようと思いました。
 12月の空気はぴんとはりつめ、真っ白に輝く月が顔を出した、静かな誕生日の夜でした。「夜の光だけが、わたしの誕生日をひそかに祝ってくれているような、そんな気がしたのだ。」(30頁)
それから、毎年、誕生日の夜に、彼女は散歩にでるようになります。
彼女は、あるカルチャースクールで一人の男性と出会います。
名前は三束(みつつか)、高校で物理の教師をしています。彼女は光のことを尋ねます。毎週木曜日の夕方、彼はいつもの喫茶店にいます。彼女は出かけて物理の話などを聞くことになります。静かに沈黙を交えて二人の話は続きます。
 あるとき、彼女は、自分は一人きりだと思います。しばらくの別れ、長い葛藤の後で、二人で彼の誕生日を祝いました。帰り道、彼女は涙の中で彼に愛を伝えます。彼は、片方の手を彼女の頭に乗せて、静かに彼女の涙が収まるのをじっと待っています。
 彼女は私の誕生日の真夜中を一緒に過ごして、一緒に歩いてくれませんかと尋ねます。見上げると彼は、何度もうなずいていました。
 しかし、彼女の誕生日の夜、待ち合わせ場所には彼の姿はありませんでした。
彼から手紙が届きました。そこには、一つ、大事な嘘をついていたと書かれていました。彼は、高校教師ではありませんでした。手紙の中で何度も謝っていました。彼女は彼に明るい雰囲気の手紙を書きました。しかし、便せんを折りたたんでから、彼の住所を知らないことに気づきました。
 春が過ぎ夏がやって来て、知らないうちに秋は深まり、やがて冬が巡ってきます。彼女は、ひとりきりの夜を、ひとりきりの真夜中を過ごす人たちのことを思います。彼女は、「二人で話したことを思い出しながら、とても好きだったことを思いだし、時々泣き、また思いだし、それから、ゆっくり忘れていきました。」(302頁)

静かな恋愛小説です。
主人公二人の会話は、いつも、沈黙と隣り合わせです。物理の光の話も、音楽の話も淡々と語られています。フリーになった彼女の仕事相手である友人の聖との対象がとても興味深く描かれています。人生に対して積極的な聖の姿、それに対して彼女の消極的な姿。彼女は、聖から「あなたをみてると、いらいらするのよ。」といわれます。でも、二人は一人きりという意味では同類なのかもしれません。
この小説は、ひとりきりの夜を、ひとりきりの真夜中を過ごす人たちのために書かれたような気がします。




すべて真夜中の恋人たち
講談社
川上 未映子

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
虚像の人を好きになってしまったこと、哀しいですね。
kiyogiku
2012/06/10 21:28

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